生 : 1939年3月1日(キューバ共和国、ハバナ)
レオ・ブローウェル (Leo Brouwer) はキューバのギタリスト、作曲家。代表作に『11月のある日』などがある。
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生涯 | Biography
青年時代
レオ・ブローウェルは1953年、キューバのギター学校創設者であるイサーク・ニコラ (Isaac Nicola) の下でギターの習得を開始した。1955年7月22日にハバナのリセウム・アンド・テニスクラブで最初のリサイタルを行う。同1955年、独学で作曲を学んだブローウェルは『ギター協奏曲第1番』などの制作を開始し、翌1956年に最初の作品を発表する。
1959年、奨学金を得たブローウェルは米国ハートフォード大学の音楽学科へ、続いてニューヨークのジュリアード音楽学校へ留学し、ギターの高度な技術を習得する。ここでブローウェルを教えたのはステファン・ウォルペやヴィンセント・パーシケッティ、ジョゼフ・イアドーン (Joseph Iadone) といった音楽家だった。
ナショナリズムの時代 : 1955-1962
1960年、ブローウェルはキューバ映画芸術産業庁 (ICAIC) の音楽部門長に就任し、映画音楽の作曲を始める1)キューバ映画芸術産業庁はカストロやチェ・ゲバラらによる1959年のキューバ革命後に創設された国立機関。革命を顕彰するための映画を多く作成し、同国の映画産業を牽引した。。ここで彼が執筆した楽譜は60曲を数えた。1969年、ブローウェルはICAICの「音響実験グループ」創設に関わり、メンバーの教育活動に当たった2)音響実験グループの創設メンバーにはやシルヴィオ・ロドリゲスやパブロ・ミラーネスといったキューバ現代音楽の重要人物が多数含まれていた。その経緯はドキュメンタリー映画『声を上げる集団がいた』(Hay un grupo que dice, 2013) に描かれている。。
ブローウェルは1960年から1968年にかけて国営放送局「ラジオ・ハバナ・キューバ」の音楽顧問を務め、また1960年から1967年にかけてハバナ市立音楽院で対位法や和声、作曲などを教えた。テクストにはブローウェル自身の執筆した教科書『現代和声総合』(Síntesis de la armonía contemporánea) が使用された。
この時期の作品を特徴づけるのはソナタや変奏曲といった伝統的な音楽形式に加え、キューバ独自の和声構造である。これはブローウェルの愛国心がなしたものだった。
アヴァンギャルドの時代 : 1962-1967
ブローウェルは1960年代、作曲家のフアン・ブランコ (Juan Blanco) やカルロス・ファリーニャス (Carlos Fariñas)、また指揮者のマニュエル・デュシェーヌ・クザン (Manuel Duchesne Cuzán)らとともに前衛音楽の運動を主導する。この時期の作品は様式的な厳格さを保ちながらも、「草木や幾何学的なシンボルなど、音楽の様式を発見する手助けとなるものは何でも使う」というブローウェルの言葉が示す通り、前衛的な音響のコンセプトがより優勢となっている。
こうした傾向は同時代における多くのキューバ前衛音楽家と同様、ポーランドからの影響を多分に受けたものである。ブローウェル自身も1961年に「ワルシャワの秋」へ赴き、ポーランド前衛音楽を直接耳にしている。1960年代の作品は総じてポストモダンの作風によって特徴づけられている。
今日のブローウェル
1970年代に入ってもブローウェルは偶然音楽やセリエル音楽のような前衛的要素をギターで表現しようとした。しかしながら、1980年代に入るとシンプルかつミニマル、そしてロマン主義的な新しい作風へと移行する。
ブローウェルはハバナギターコンクールを主導し、また1981年よりキューバ国立管弦楽団の主任指揮者に就任した。さらにはベルリンフィルやコルドバオーケストラを含む海外のオーケストラも指揮した。ベルリン芸術アカデミーや UNESCO の会員となり、また1996年キューバ高等芸術院の名誉教授に就任した。長きにわたる国際的な活躍により、キューバ政府よりフェリックス・バレラ勲章を授与されている。
作品一覧 | Works
参考文献 | Bibliography
- Brouwer (Mezquida), Leo | Grove Music [https://doi.org/10.1093/gmo/9781561592630.article.04092]
Notes
1. | ↑ | キューバ映画芸術産業庁はカストロやチェ・ゲバラらによる1959年のキューバ革命後に創設された国立機関。革命を顕彰するための映画を多く作成し、同国の映画産業を牽引した。 |
2. | ↑ | 音響実験グループの創設メンバーにはやシルヴィオ・ロドリゲスやパブロ・ミラーネスといったキューバ現代音楽の重要人物が多数含まれていた。その経緯はドキュメンタリー映画『声を上げる集団がいた』(Hay un grupo que dice, 2013) に描かれている。 |