ナルシソ・イエペス

ナルシソ・イエペス

生 : 1927年11月14日(スペイン王国、ロルカ)/没 : 1997年5月3日(スペイン王国、ムルシア)

ナルシソ・イエペス (Narciso Yepes) はスペインのギタリスト、作曲家。代表作に『禁じられた遊び』より「ロマンス」などがある。10弦ギターの考案でも知られる。

生涯 | Biography

ナルシソ・イエペスはスペイン南部の田舎町であるロルカにて、平均的な農民の子として生まれた。自然に囲まれた環境で幼少期を過ごし、ギターの奏でる庶民的な音色に親しんだイエペスは、ヘスス・ゲバラ (Jesús Guevara) という名の音楽教師よりソルフェージュおよびギター奏法を習った。

1939年、13歳の頃に家族とともにバレンシアへ移り住んだイエペスは音楽学校に入学し、ビセンテ・アセンシオに作曲を学んだ。アセンシオはギタリストではなかったものの、イエペスにギター奏法も教えた。

家族が故郷のロルカに戻ると、イエペスは指揮者アタウルフォ・アルヘンタの導きによりマドリードへ移り住む。この都市でイエペスは、アルヘンタを介してレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサやホアキン・ロドリーゴといった音楽家と知り合った。1947年、イエペスはテアトロ・エスパニョールにて、アルヘンタが音楽監督を務めるスペイン国立管弦楽団とともに、ロドリーゴの『アランフエス協奏曲』でデビューを飾った。この出来事は20世紀ギター史の重要な一里塚と見なされている。

翌1948年、イエペスはジュネーヴでコンサートを行い、活動の場を国際的な舞台へと広げてゆく。イエペスは欧州で演奏ツアーを行った後、1950年パリに滞在してヴァルター・ギーゼキングやジョルジェ・エネスクより演奏法を学んだ。この都市でイエペスはナディア・ブーランジェとも知己を得ている。

映画『禁じられた遊び』や『金色の眼の女』の音楽を担当。中でもルネ・クレマン監督による『禁じられた遊び』の中で印象的に使用された「愛のロマンス」はイエペスの代表作であるのみならず、今日までクラシックギターのスタンダードナンバーとして世界中で親しまれている。バロック音楽に関心をもつイエペスは17、18世紀に作曲され今日では忘れられた音楽をギターに翻案。ギター曲のレパートリー拡大につながった。

1950年以降、イエペスはアンドレス・セゴビアに次ぐ国際的名声を得る。レオ・ブローウェルやブルーノ・マデルナ、モーリス・オアナやホアキン・ロドリーゴといった作曲家がイエペスに曲を捧げた。

私生活では1958年、パリ・ソルボンヌ大学哲学科の学生だったマリサと結婚。夫婦は3人の子に恵まれた。

イエペスは1963年、古典楽曲の音色をより正確に表現するため十弦ギターを考案した。表現や音色の豊かさから、今日に至るまで多くのギター奏者の支持を集めている。

十弦ギター

1960年代から1970年代にかけて欧州をはじめ、アメリカ大陸や東アジアと世界を股にかけて演奏旅行に赴いた。1980年にソ連で初のコンサートを開催。日本での演奏は40回を数えた。

イエペスはその名声により、数多くの賞を得た。主要なものとしてムルシア大学より哲学の名誉博士号を、国王フアン・カルロス1世より芸術功労金メダルを授与され、アルフォンソ10世賢王アカデミーおよび王立サン・フェルナンド美術アカデミーの会員に選出されている。

参考文献 | Bibliography

  1. narciscoyepes.org [http://www.narcisoyepes.org]
  2. Yepes, Narciso | Grove Music [https://doi.org/10.1093/gmo/9781561592630.article.30699]
  3. Yepes Narcisso (1927-1997) [https://www.musicologie.org/Biographies/y/yepes.html]
1988年生まれ。東京大学文学部卒業後、同大学院進学。現在はパリ社会科学高等研究院にて在外研究中。専門は近代フランス社会政策思想史。好きな作曲家はジャン・シベリウス。Doctorant à l'Ecole des hautes études en sciences sociales, ingenieur d'études. Histoire politique et culturelle.
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